台湾でのロングステイ中に、擂茶を味わったことのある方は、かなりおられることと思います。ほんのりと甘く、お茶という感覚とは少し異なってますよね。擂茶といえば客家人というイメージなんですが、台湾の友人の話をきっかけにちょっと調べてみましたが・・・おもしろいことに遭遇しましたよ。
擂茶の起源
擂茶は、客家人がお客さんをもてなす伝統のお茶菓子の一つなんですね。広東省や福建省一帯から台湾に移民してきた客家人は、皆「擂茶」を飲む習慣があり、擂茶でお客さんをもてなす事で熱意を表すと共に、お年寄りの中にはこれを養生長寿の飲み物とみなしている人が大勢いらしゃっるようです。
擂茶の「擂」は研磨を意味し、擂茶は別名「三生茶」又は「三生湯」とも呼ばれています。古くは「生米」「生姜」「生茶」等、三種類の材料をペースト状になるまですり、煮込んでから食べるものとして知られていました。
中国の古書に記載された情報によると、擂茶が別名「三生湯」と呼ばれていたのは、三国史の時代に張飛が官兵を引き連れて武陵を進攻した時までさかのぼります。
兵隊の多くが急性の伝染病にかかってしまい、戦う気力を失いかけていました。そんな中、ある薬草専門の漢方医が、先祖代々受け継がれていた疫病に効くという秘伝の飲み物を兵隊に与えたところ、多くの兵隊たちが伝染病を克服しました。
擂茶の効能!?
「生米」「生姜」「生茶」を混ぜ合わせ、ペースト状にすりあわせた後に火を通したものであり、それがいわゆる擂茶であったとされています。この一件で、擂茶が広く伝えられることとなり、現在に至っているようです。
つまり、擂茶というのは客家人が創りだした固有の文化というわけではなく、三国史の時代以前から中国本土で飲まれていた秘伝の飲み物だったんですね。それを客家人が、何らかの経緯で特に重宝するようになったと言えそうです。
現在、台湾では新竹、桃園、台北、花蓮、美濃などの地域の客家人が、依然この美食文化を保っています。客家人が受け継ぐ擂茶は、茶の味がピュアで、濃厚な香りを放ち、のどの渇きを潤してくれるだけでなく、体のほてりを沈めたり、胃腸などを健やかに保ち、滋養強壮にも一役買っているとされています。
確かに、客家人が大切に受け継いでいる理由はわかるような気がします。ただ、台湾でのロングステイ中に、擂茶は客家人の飲み物という印象が出来上がっていましたし、実際にそのようなイメージは存在していますよね。そのあたりの理由はいったい何なのでしょうか?
客家人と擂茶
擂茶の主原料は「米仔」と呼ばれる米を水に浸し、蒸して乾燥させたものと「茶葉」であるため、非常に軽く携帯しやすいものでした。
同時に、食料としての役割も成し、米食い虫も湧きにくく保存にも長けていたため、非常に扱いやすく便利であっただけでなく、移民の歴史を刻んできたエスニックグループである客家人にとっては、時に、難を逃れるために拠点を捨て、流浪を強いられた場合の非常食としての役割をも果たしてきた、特別な飲み物だったようです。
この辺りの経緯を知ると、擂茶がいかに客家人の生活、そして生命をも支えてきたのかが、とても生々しく伝わってきますよね。擂茶と客家人の強い結びつきが非常に明快に理解できます。
ちょっと話はそれますが、この擂茶、ロングステイにも応用できます。特に、拠点を移しながら数日~1週間程度の滞在を繰り返していくタイプのロングステイでは、擂茶を常時キープしながら移動・・・なんてこともできますよね。
さて、現在の客家人一族にとって、擂茶は身近なもので客人をもてなす伝統的な茶菓子であるわけですが、伝統の「擂茶」のほとんどは、実は塩味であり、全く甘くなかったようです。しかし、あまり受け入れなかったため、現代は甘い味付けに変貌を遂げ、台湾の人々から支持されるにいたったというわけですね。
台湾人の友人の一言がきっかけで、ちょっとのつもりで調べてみた擂茶ですが、ここまで歴史、客家人との関わりを深く感じさせてくれるとは、正直意外でした。擂茶を楽しみつつ、客家人の歴史と文化に触れてみるのも、ロングステイのおもしろいテーマになり得ますよね。
私自身もかなり擂茶に興味を感じる結果となりました。擂茶の味もさることながら、その裏にある歴史や文化を非常に意識することとなり、次回のロングステイでは、ぜひともじっくり味わってみたいと思っています。